「ポンプコラム」カテゴリーアーカイブ

マグネットスイッチ(電磁開閉器)の仕組み 春日電機 MUF10-4

ポンプの制御にはマグネットスイッチを使用しているものが一般的です。
これは、ポンプの起動には大電流が流れる為、機械的にスイッチをON/OFFさせているものです
※最新のポンプ制御盤ではマグネットスイッチに変わり「ソリッドステートコンタクタ」と呼ばれる電気的に接点をON/OFF出来る物が使用されているものもあります。
今回の部品は春日(http://www.kasuga.jp/)製のMUF10-4です。その他、三菱、ナショナル、富士電機、東芝などのメーカーからも発売されています。
KASUGA MUF10-4
写真1

これがマグネットスイッチ(電磁開閉器)です。上側がコンタクタ(電磁接触器)、下側がサーマルスイッチから成り立っています。上側を間違えてマグネットスイッチと呼んだりする場合もありますが、正式には上記の通りの呼び名です。今回はこのコンタクタを見ていきます。仕組みとしては、A1とA2の端子にAC200Vの電圧をかけるとコイルに電気が流れ、磁石のついたスイッチを「ガチャ」っと動かしてスイッチがONになります。ガチャッと「機械的」にスイッチが入るわけです。

MUF10-4 接点 摩耗状態の確認
写真2

表面カバーを取外し接点部を確認している写真です。ポンプ点検ではこのように接点の上側、下側が磨耗していないかを確認します。接点に損傷があったり、厚みが1/2程度になった場合は交換です。

マグネットスイッチ 接点
写真3

実際に下側の接点を取り外して見ました。一番右側は使用していない接点の為、きれいなままなのが確認できます。

接点 稼働側
写真4

接点上側のユニットを外した状態です。上側の接点も傷んでいるのが確認できるかと思います。下側の灰色の部分が磁石部分です。

コンタクタ コイル
写真5

マグネットスイッチの下の部分です。右上のネジがA1、左下がA2端子になっています。

コイル
写真6

コイルを取り外してみました。このコイルに電気が流れ、電磁力により磁石部を動かします。

MUF10-4 部品一覧
マグネットスイッチは接点の磨耗により、スイッチONの際、1箇所のみスイッチの入りが遅かったりすると、欠相となりブレーカーが落ちたり、劣化により接点がくっついたままだったり、という症状が考えられます。本体を触ってみて、振動が感じ取れるようであれば、劣化の兆候です。

また圧力タンクの故障などでインチング運転(ポンプの入り切りが激しい状態)になると接点劣化に拍車がかかります。故障の際はすぐ断水になりますので(機種により2台交互運転で片側運転に切り替わるものもあります)劣化の際はすぐ交換したほうが良いでしょう。

テラルNX給水ポンプユニットの旧型SX型からの変更点

テラルの給水ポンプユニット形式がSX型からNX型へと変更になり
インバーター給水ポンプユニットもNX-VFC型へと一新されました。
メーカーのカタログを入手しましたので何が変わったか追っていきます
テラル NX-VFC
新型 NX-VFC
テラル SX-VFC
旧型 SX-VFC

外観上の大きな変更は制御盤の位置が変更になった点です。
またフロースイッチが付くことになりました。ポンプユニット比較で旧型と新型を比べてみます。

メーカー名/品番 重量(kg) 奥行(mm) 幅(mm) 高さ(mm) 最大給水量
(L/min)
吐出揚程
設定範囲
(m)

騒音値
(dB(A))

テラル 新型
NX-VFC502-2.2D
97 662 560 575 380 18〜42 56
テラルキョクトウ 旧型
SX-VFC502-2.2D
114 705 660 530 380 19〜36 56
エバラ
50BNAMD2.2A
119 555 780 541 380 20〜31 56
川本製作所
KF2-50A2.2
141 535 910 520 360 20〜32 54

重量が大幅に減ってます。17kgの軽量化です。施工性が上がります。

また、高さが45mm高くなってます。幅と奥行きがその分小さくなっています。

設置場所として高さ制限がある現場が多いので、高さが高くなると使用できる現場が限定されるかもしれません。
他メーカーに比べテラルは高さが低かったので使用していた現場がありました。
吐出揚程の最大値が高くなっているのでポンプの能力も上がっていると思います。
また既存の基礎が小さい場合(たとえば600*600mm程度)はテラルしか載らないというような現場もあります。

個人的には制御盤の整備性があがっているのと、重量が軽くなっているのがうれしいところです。

サーマルスイッチの仕組み 春日電機 MUF10-4 HRD-010編

サーマルスイッチとはモータが過負荷(回転が重くなること)となった時にコイルが焼損するのを防止するスイッチです。写真のものは春日電機 MUF10-4、荏原製作所の給水ポンプで使用されていたマグネットスイッチです。
kasuga HRD-010 サーマルスイッチ
マグネットスイッチの下の部分(赤丸の部分)をサーマルスイッチといいます。

早速、取り外して分解してみてみます。
春日電機 サーマルスイッチ 仕組み1
モータへの電気はAからBへ向かって流れます。コイルに電流が流れることによって熱が出ます。

春日電機 サーマルスイッチ 仕組み2
このコイル部分の電流が増えると熱が発生し、コイルが巻いてあるバイメタルが伸びて下の板を矢印の方向に押します。すると、Cのラッチ部分が外れます。

春日電機 MUF10-4サーマルスイッチ 仕組み3
Dの接点(スイッチ)が右から左に動いて、回路が切り替わります。この状態が「サーマルトリップ」または「サーマルが作動した」という状態です。

サーマルスイッチの正常な状態
通常はこのスイッチが沈んでいますが、

サーマルトリップのトリップ状態
サーマルスイッチが作動すると(過負荷になると)飛び出ます。飛び出ているときは過負荷になったということです。このスイッチが飛び出ているかで異常を判断します。スイッチが切れることでコンタクタを遮断します。サーマルスイッチ自体ではモータ電路の遮断ができません。

サーマルスイッチ 設定値
このダイヤルで電流値を決めます。モータの定格電流値+アルファ(ちょっとだけ)の値が良いでしょう。この値以上の電流が流れるとサーマルスイッチが作動します

マグネットスイッチとサーマルスイッチの関係
サーマルスイッチはコンタクタのON/OFFを制御している回路の途中に入っています。
サーマルスイッチが作動するとこの回路を切断させるので、マグネットスイッチがOFFになるというわけです。

サーマルスイッチが作動した場合に考えられるのはモータの過負荷です。
ポンプの羽に異常があったり、軸受け(ベアリング)に異常があったりすると回転が重くなり(手で廻せない位になります)電流が大量に流れ(過電流・過負荷)、サーマルスイッチが作動します。こんなときは2台運転であれば、応急的に片側運転にして、すぐにポンプの修理もしくは交換をしましょう。またコンタクタの接点不良時にも作動する場合があります。その場合はコンタクタの交換が必要です。

※H25.4.1
下記新しく記事を書きました。
ポンプで使用されるサーマルスイッチ 三菱 TH-N20

※H26.7.25
写真を撮りなおしました。加筆修正しました。

減圧弁の仕組み

給水ポンプユニットの減圧弁の仕組みについて

給水ポンプの制御方式は主に3種類ありますが(加圧給水ユニット ポンプの選び方)、今回はその3種類のうち
「吐出圧一定給水ポンプ」(または減圧弁方式給水ポンプ)に使われている減圧弁の仕組みを解説します。

減圧弁とは

減圧弁とは、高い水圧のものを任意に決めた水圧に抑える弁のことです。小水量(本説明で出てくる減圧弁の場合10L/min以下の水量)の場合は設定水圧より上昇します。ちなみに故障すると、水圧があがらない、もしくは水圧があがりすぎるといった症状がでます。

最近の給水ポンプユニットの主流はインバータです

10年以上前はインバータがまだ高価であったこともあり、この減圧弁方式を採用される事が多かったのですが、最近は価格もこなれており、省エネも図れるためインバータ方式を採用することが多いです。
現行機種で減圧弁方式ポンプユニットは、荏原製作所はエバラフレッシャー1300シリーズのみです。

減圧弁の外観

今回分解するのは荏原製作所の給水ポンプユニット(1990年代)の減圧弁です。
現行機種のものは合流配管に内蔵され小型になっています。
参考:荏原製作所 給水ポンプユニットの逆止弁と減圧弁

荏原製作所 減圧弁BVS-40

エバラ フレッシャー130 減圧弁

これが減圧弁です。ポンプの吐出し側についており、細い配管が吸込み側に戻るように接続されています。

エバラ BVS-40 減圧弁
取り外した減圧弁

本体に書いてあるように矢印の方向に水が流れます。
写真左側のパイロット弁の圧力調整ナットを廻すことにより吐出し圧力を変動させる事が出来ます。

上から見るとこのようになっています。

エバラ BVS-40 吐出し側
減圧弁を上から撮った写真
 
写真左側にL−Hと書いてありますがそれぞれ、Lo、Hiの略で
その方向にナットを廻すと圧力が下がる、もしくは上がります。
この上の蓋を取ると、中の弁体が取り出せます。

エバラ BVS-40 弁体
主弁の写真

黒い部分はゴムです。
 
エバラ BVS-40 流入側
減圧弁を下から見た写真

エバラ BVS-40 減圧弁 パイロット弁の取外し
パイロット弁を取り外した写真
写真右の下側の穴から水が入り真ん中の穴から逃していきます。

エバラ BVS-40 減圧弁 パイロット弁分解
パイロット弁

ナットを廻すことによりバネの力を可変し、弁の開け閉めの圧力が変わります。
このバネはかなり固いです。

エバラ BVS-40 減圧弁 パイロット弁 調整弁
調整弁

こちらはバネ部とパッキン部になっており調整は出来ません。
こちらのバネはやわらかいです。
 

減圧弁の構造

減圧弁はどのように作動しているのでしょう。
構造を見ながらご説明します。

減圧弁 断面図 静止状態
ポンプ停止時は各々弁が閉じています。
 
減圧弁 断面図 作動状態
ポンプが起動し始め、圧力が設定圧より高くなるとパイロット弁が開き
ポンプの吸込み側に水を逃がし圧力を落とします。
また、一次側・二次側の圧力差により主弁が開き給水量を増やします。

このときの圧力差で調整弁も開閉し、主弁の開閉具合を微調整します。
 
このように、ゴム・バネなどにより微妙なあんばいで制御されています。
ゴム部だけでなく、弁体と擦れる部分の金属部も劣化し動きが渋くなる場合もあります。

5年以上経過し動作が怪しい場合は減圧弁全体の交換をお勧めします。

2012/07/09 修正加筆しました
2013/02/20 修正加筆しました

メカニカルシールとは

メカニカルシールとはポンプの軸から水が漏れないようにしているシール部材のことです。
この軸用のシール部材にはメカニカルシールとグランドパッキンと呼ばれる2種類の部材がありますが、今回のコラムではメカニカルシールについてです。

メカニカルシールのある場所

メカニカルシールは下記の赤色の箇所にあります。
シール部分をスプリングで適切な力をかけることにより、シール部分に水の薄い膜を形成し水が漏れなくかつ回転が出来る仕組みとなっています。
荏原製作所 陸上、水中ポンプハンドブック 50Hz FDP型ステンレス製ポンプ より

エバラポンプ FDP 断面図
エバラポンプ FDP 断面図

図1 荏原製作所:FDP型ポンプ断面図

  • 青色:水が浸かっている部分
  • 緑色:羽根車、軸(回転部分)
  • 赤色:メカニカルシール

図2 メカニカルシール部 拡大

  • 青色:水が浸かっている部分
  • 緑色:羽根車、軸(回転部分)
  • 赤色:メカニカルシール(軸といっしょに回転する部分)
  • 薄赤色:メカニカルシール(ケーシングと共に固定されている部分)
  • 橙色:水の膜ができる部分

メカニカルシールの写真

メカニカルシール 部品写真
写真1 メカニカルシール構成部材。

メカニカルシールの説明

メカニカルシール 封水部分
写真2 赤矢印部分が擦れ合います。
写真左側がセラミック 右側がカーボンでできています。
もし水の膜が形成できない場合は摩擦部分が発熱し破損してしまいます。
水の薄い膜の部分では、1時間あたり0.05~0.15mLの水漏れがあるのですが、清水の場合は蒸発してしまう為、目視では漏水が無い様に見えます。
粘性のある液体(たとえば油)では蒸発しませんので漏れがでてきます。
また、微粒子を含む液体(スラリー液)や汚れた水では粒子がメカニカルシールを傷つけてしまい、徐々に水漏れが増えてくる場合があります。
また、温度によって酷く漏れ量が増えたりすることもあります。漏れが酷い場合は基本的に交換となります。

メカニカルシールの購入はポンプショップアクアまでどうぞ
メカニカルシール

メカニカルシールのイーグル工業のWEBページも参考になると思いますのでリンクしておきます。
http://www.ekk.co.jp/seal/